第16話「初デート」
交際が成立して、LINEでのやり取りが始まりいよいよ初デート…
とはいえここまでの人生、女性との交際経験も少なくとまどってしまう自分
1~2回目のデートは、短時間のお茶やお食事…たしかマニュアルに
そんなことが書いてあったことを思い出し、入会したときに渡された
ガイドブックを引っ張り出して確認してみる。
そこには、1・2回目→短時間デート、3回目→半日デート
4回目→1日デートと段階的に進めていくことや、初回デートまでに
しておくことなども書かれているが、具体的なイメージがわかなかったので
カウンセラーさんに相談をしてみた。
やはり実際の例をいくつもみているカウンセラーさんの話は参考になる。
デートのお店は候補を3つぐらいあげてお相手に選んでもらうこと、
初回デートでは、たくさん会話をしてお互いを知っていくことが大事だけれど、
時間は長引かせないよう注意すること、お相手の方はこのあとも別のお見合いやデートが
入っているかもしれないから…(なるほど!気遣いが大事ってことだね)
他にも、お店のドアを開けてあげる、女性には車道側を歩かせない
など、気遣いだけでなくエスコートすることも大事ということ
ついつい忘れてしまいがちだけど、今はしっかりと頭に叩き込む。
初デート当日。
服装はシンプルに襟付きのシャツとチノパン、それにトートバッグ
マニュアルに、きれいめカジュアルと書いてあったし、カウンセラーさんからも
清潔感が何よりも大事!シンプルなのが無難!男性は意外とバッグに困るけど、
合わせやすいトートバックをひとつ持っていると便利だよ…
と言われていたのだが確かにその通り
「シンプル イズ ベスト」それを基本にしていればあれこれと悩まずに済む。
初デートはお見合いの時に話が出た銀座のイタリアンにて。
お店の予約はしておいたが、それでも10分前には到着。思った通り緊張。
ほぼ同時に彼女もやってきた。「とても楽しみにしてました!お天気で良かったですね」
お見合いの時と同じ、ハツラツとしていて明るく元気な印象。
席に着いてまずはメニュー選びから。
何がいいかを聞いてみて迷うようだったら、こちらが少しリードした方がいいかな?
なんて思っていたがそんな心配は無用だった。
彼女は慣れた感じで、自分から「これ美味しそうですね」などと言いながら料理を選んでいく
会話も弾んで楽しんでいるところに前菜がきた。
自分が取り分けようと思っていたのだが、先に彼女がさっと小皿を取り、
テキパキとキレイに取り分けフォークまでとってくれる
お礼を言って食べながら、また会話が始まる。彼女は質問もしてくれるがよく喋る。
話に夢中にはなっていても、次の料理が運ばれてくるとパッと取り分けをしてくれる
口もよく動くが手もよく動く、それが自然でテキパキと無駄がない。
なんだか常に先を越されてる感じで、なぜか落ち着かないのは気のせいだろうか
気が利いているといえばそうなんだけどなぁ…でも正直なところ
居心地の良さのようなものは感じられない…
明るく元気でサバサバしている彼女とは話題が尽きない
会話のキャッチボールも上手くできている…と思っていたが
趣味の話になると彼女の話が止まらなくなってしまった。
自分の方にも話は振ってはくれるけど、自分はついていけていないような
ちょっと置いていかれているような気分にもなっていた。
でも彼女は楽しそうに話をしているし、まぁいいか…
帰り道、駅まで歩きながらも彼女のテンポに合わせてとか、人にぶつからないようにする
とか、さりげなくエスコート。駅に着いて軽く挨拶を交わし改札に向かう後姿を見送って、デートは終了。
電車に乗り、今日のデートのことを思い出し振り返ってみた。
お相手の彼女は、何事もテキパキとこなしていくし明るくてサバサバしていて
話題も豊富で会話も途切れない…でも、いつの間にかすべてが彼女のペースになっていた。
多分悪気はないんだろうけど、こちらは置いていかれたような気分になってしまう…
でも、これも自分の勝手な思い込みかもしれないし、今日の数時間ではまだわからない。
もう少し様子をみてみよう、次はもっと積極的に自分の話もしてみよう…
そんなことを思いながら家に着く前にLINEをして、今日のお礼と次にまたお誘い
したい気持ちがあることを伝える。
そして、カウンセラーさんにも報告、今日の様子と今の自分の気持ちを話してみた。
やはり自分の気持ちを吐き出せて、聞いてくれる人がいることは安心する。
一緒に振り返りをすることで客観的にみることができるし、第三者の意見も聞くことで
冷静になることもできる。
自分一人で突っ走るのではなく共有していくことが大事、ということをあらためて感じた。
今日は楽しかったけれど予想以上にドッと疲れて、家に着くなりベッドに倒れ込んだ
「毎回こんな感じなのかな」多少の不安を抱きつつ、記念すべき初デートは終了した。
story by 桜結