第21話「4回目のお見合い」
今まで3人の人とお見合いをしてきたけれど
いずれも上手くいかなかった。
相談所に入会して、カウンセラーさんもいるし
2,3回お見合いをすればなんとかなるのでは、とタカをくくっていた所も
あるし、正直、軽く考えていたところもあった。
上手くいかなかくて、もうやめようと思ったこともあった
そんな時に、カウンセラーさんや友人に相談して原点に返り
自分は、どんな生活を望むのか?どんな相手を望むのか?を
じっくり考えて、申し込みをした人。
今日は、その人とお見合いの日
早めに行って待っていると、その人はやってきた
ごくごく普通の人なんだけれど、醸し出す雰囲気は
ほっこりと柔らかな春の陽ざしのような人だった。
席について話をしていても、終始ニコニコしている
普段から、こんな笑顔の人なんだろう…
話し方も優しくて穏やかで落ち着ける人だった。
ここは高級ホテルのラウンジなのに、思わずひなたぼっこをしながら
縁側でお茶を飲む夫婦の姿が思い浮かんでしまった。
今日初めて会う人なのに、前からの知り合いのような気がする…
自然とそのことを伝えると、今、自分が住んでいる所に
彼女は学生時代から住んでいたことがあって、だから懐かしいと言って
くれた。
あそこのお店はまだあるが、こっちのお店はもうなくなってしまった
あの場所は、今はマンションになってしまっている…そんな会話をしながら
お互いの生活のこと、身の上話になった。
穏やかな笑顔の彼女だが、片親で介護を経験している
結構長い期間で、傍からみれば大変だったと思うが、そんなことは一切言わず
そぶりも見せず、最期の時を一緒に過ごすことができてよかった…と言っていた。
まだ両親のいる自分のことを羨ましいと言ってくれ、これから介護が必要になるで
あろう両親のことも温かい目で見てくれているようだった。
自分の選んで決めた人に親がいたなら、お世話をするのは普通のことと思っているようだった。
はっきりとはいわなかったが多分、本心だろう…彼女の笑顔と醸し出す雰囲気が
そのことを物語っていた。
今までお見合いをした人達とは違う…
目の前にいる人は、向いている方向が一緒かもしれない、価値観が同じかもしれない
そんな気持ちが沸き上がってきたが、そろそろ終わりの時間にもなっていた。
もう少し一緒にいたい…そう思った自分は、彼女を駅まで送ることにした。
駅まではあっという間で、別れ際に思わず「またお会いしたいですね」という言葉が
飛び出していた。
彼女からは笑顔で「ありがとうございました」の返事だけだったが、とても温かい
気持ちになった。
カウンセラーさんには、そのままを報告しホクホクした気持ちのまま家に帰ると
その日のうちに良い返事がきて、すぐに初デートの日時も決まった。
また会えると思うとワクワクした。今までに感じたことのないような
心の底からのワクワクだった。
story by 桜結